2012/10/23

db tech showcase 2012に行ってきました

株式会社インサイトテクノロジー主催の db tech showcase 2012 に参加してきました。 特定のベンダーにこだわらず様々なデータベースに関する技術カンファレンスです。昨年の INSIGHT OUT 2011 と同じような "鬼熱い" コアなお話が聞けると思うとそれはもう楽しみです。

資料の一部は SlideShare で公開されています。

また当日の様子の一端は Togetter や EnterpriseZine の記事で触れることができます。

今年は以下のセッションを聴講しました。覚えている範囲のことをここにメモしておきます。

  • Day1
    • A11 DBよ、ROCKに戦え!
    • B12 RDBMSはコモディティー化する!? クラウド環境に対応する実装とは
    • A13 Is Exadata for you?
    • C14 ひとつのデータベースでは、夢を現実に変えられない! Human Dreams. Make IT Real.
    • B15 SQL Server と Indexの進化
    • A16 Case Study: How Rakuten Reduced Database Management Spending by 90%
    • C17 半導体ストレージと仮想化技術のDB活用方法と検証結果
  • Day3
    • E31 Oracle Fail Safe (WSFC) on Windows Azure
    • E32 Oracle Database設計で気をつけたいことと楽しみ
    • E33 TBD
    • E34 Welcome to the Real World 'Real' means simply electrical signals on a computer
    • A34 Drilling deep into Exadata Performance with ASH, SQL Monitoring and ExaSnapper
    • B35 all you wanna know about RMAN
    • B36 Troubleshooting the Most Complex Oracle Performance Problem I’ve Ever Seen

A11 の小幡一郎さんのオープニングセッションでは、昨年同様、開催の経緯や今回の見どころを紹介。カンファレンスの名称について「DB技術者にとって、目をキラキラさせるようなセッションをお見せするのが、db tech showcase」と話されていて、なるほどなと思いました。昨年のアンケートでは MongoDB のリクエストが一番多かったらしく、今年は用意されたようです。それでもセッションは Oracle 系が7〜8割とのこと。話は Big Data に移り、マッキンゼーのレポートにあるウォルマートの DWH の話や今年の Orale OpenWorld 2012 でのシカゴ警察のソーシャルメディアを活用した取り組みなについての話は興味深かったです。来年の話として、Big Data をどうやって高速に入れるか、と言うようなテーマで調整中のようです。楽しみです。小幡さんの Big Data 感として、「マグロみたいなもの。どうやって料理するか腕の見せ所」というようなことを話されていたのが印象的でした。

B12 後藤宏さんのセッションはご本人から言われるまで気づきませんでしたが、タイトルは昨年と同じようです。そういえば見たことあるなと思ったら昨年のセッションも聴講していました。標準化大事だよねということでした。あまりクラウドの話は無かったように思います。昨年は Oracle からの移行を念頭に、具体的にアセスメントでわかったデータ型だとかファンクションなどの具体的な移行について話されていたかと思いますが、今回はそのような具体的は話はなく、抽象的なお話しでした。「製造業におけるITコスト。グローバル企業は5%〜10%に持っていこうとしている。」「1兆円の5%は小さくない」「(個人的に)ハードウェアにもっと頼ってもいいかなと思っています」「速くするために人手をかけて頑張るお金と、そういう機械を導入して速くする費用、そろそろ分岐点をむかえていると思います」

A13 の Gwen Shapira さんのセッションは、無理して英語で聞こうとしたけどよくわかりませんでした。。。先日の OOW で発表された X3 も含む Exadata のスペックとかその辺りの話だったような気がします。

C14 の石川太一さんのセッション。物作りが原点の日立。IT をグループの主力事業とし「安心」=「ITの責任」として社会インフラを支えてきた数々の国産技術の紹介。国家プロジェクトに採択されている高速データアクセス基盤「Hitachi Advanced Data Binder」の紹介では、「非順序型実行原理」なる言葉を初めて知りました。いままでネックになっていた "順序" 実行による I/O 待ち時間を "非順序" 実行で徹底的に排除するという発想だそうです。また日本 HP との協業による Superdome 2(iCAP/GiCAP)×Serviceguard×HiRDB の構成ではノード障害は数秒で切替が完了するようで、Oracle RAC のノード障害時における再編成処理の 30 秒〜 1分を許容できない顧客へのソリューションになると話されていました。

B15 熊澤幸生さんのセッション。たまには?趣向を変えて Oracle 以外の話を聞いてみました。SQL Server 2012 で実装された ColumnStore Index について、その概念と実装、具体的な SQL 例と動作デモがありました。列指向 DB についてほとんど知識がありませんが、SQL Server も新しい技術を貪欲に取り入れているんだなと思いました。

A16 矢田龍太郎さんのセッション。オープニングセッションを聞くまで Clustrix というのが何かまったくわかりませんでしたが、あまり聞かない楽天の事例なので聞いてみました。Clustrix はオール SSD、Infiniband、物理レイヤでデータが分散配置、冗長性の確保、自動リバランス、パラレルクエリー実行などを備えた MySQL アプライアンス。1100 以上ある MySQL データベースの運用管理が大変なので、海外では実績のある Clustrix を日本初として導入したところ運用工数が大幅に削減できたとのこと。Oracle の書籍も出されているエンジニアの方なので、Clustrix の可用性構成などの説明で RAC や ASM といった、ある程度知った単語を交えられていたので理解が進みました。パラレルクエリー実行は、データではなくクエリを分割・移動させるということで、Oracle RAC とは異なるコンセプトというのが面白いと思いました。

C17 白井泰博さん、平初さんのセッション。前半は白井さんから Xeon プロセッサー E7 ファミリーの性能と信頼性を高めるアーキテクチャを搭載した HP ProLiant DL980 の説明。後半は平さんによる RHEL6 新機能と KVM の仕組みのおさらい、そして PostgreSQL を使用した検証結果の報告。面白かったのは物理的に I/O Controller Hub に近い CPU ソケットに pinning された VM が、一番遠い CPU ソケットのそれよりもパフォーマンスが 10% ほどよかったとのこと。このようなわずかな物理的な配置でも性能差がでるものだなと思いました。気になってセッション後、日本 HP のブースで資料を貰うときに、そこに日本先行初公開として展示されていた次世代 Itanium のシリコンウェハーを見せて頂きました。でかかったです。(←しょうもない感想でスミマセン。。。)

E31 大島正樹さんのセッション。Windows Azure の環境はもとより、Windows におけるクラスタや RAC 構成などまったく知らないので聞いてきました。7月の JPOUG イベントでのセッションでは Amazon EC2 でしたが、それの Windows Azure 版とのことでした。構築時のポイントとして、仮想 NIC が tun(L3) だと仮想 IP を割り当てても arp テーブルが更新されず他ノードから通信できないので、tap(L2) で作成するとのことでした。あとは OpenVPN+iSCSI で構築できたとのこと。スゴイです。

E32 塩原浩太さんのセッション。こちらも 7月の JPOUG イベントでのセッションをベースにした、設計についての熱い想いをお話しされていました。「なぜ設計をやりたかったか?」「DB診断やセキュリティポリシー策定をやっていて感じたジレンマ」「運用開始後のDBに出来る対応、対策には限界がある」→「最初からしっかり作り込む=設計だ!」実際に設計に携わっている案件で感じた難題(Oracle SE の HA 構成で決まった後にユーザ数が 1,000人、4,000 セッションとわかった)について意見を求められていましたが、私は、多いなー PGA たくさん要るなーと思うだけで何も浮かびませんでした。。。終盤、REDO ログの冗長化は当たり前のように行うけど、アーカイブ REDO ログの出力先が 1 つであることが多いのは何で?という問いかけをされましたが、あまり時間も無かったようなので次回に持ち越し?のようです。

E33 Tanel Poder さんのセッション。セッションタイトルが謎ですが、JPOUG 枠で出られるからには何かあるはず。気になって仕方ありません。自己紹介のスライドで見たことあるアイコンだなと思ったら、Google 検索経由で何度も参照させて頂いていた blog の当人でした。ビックリ。

いきなり LT のようなスピードで SQL*Plus によるカラーシーケンス表示。即座に Intensity Color が足りないなと思いました :)

そういえば以前 @discus_hamburg さんが遊ばれていたのはコレだったですね。

そして SQL*Plus 上で自作スクリプト Session Snapper(snapper.sql) を用いたトラブルシュート方法の解説。解説の内容もそうですが、端末タイトルにサーバプロセス ID を表示させたり、login.sql のカスタマイズ、#ifdef のような置換変数の使い方など非常に参考になることがたくさんありました。しかもこれらのスクリプトは blog からダウンロードできるます。(zip も有!)

デモ操作で SQL*Plus に打ち込んだ動的パフォーマンスビュー(v$sess_time_model)が TAB で大文字に置換されたところを見ると、rlwrap に rlwrap_ext か何かの辞書を利用されているようでした。端末操作好きな自分としては、そっちばかり気になっていましたが非常に楽しかったです。blog 記事はどれも濃くて読むのが大変ですが、まずは SQL*Plus 力を高めるところからアプローチしていこうかなと思いました。

(追記) このような経緯があったとは知りませんでした!

E34 畔勝洋平さんのセッション。The Matrix をテーマに、Oracle Database の待機イベントを strace コマンドでシステムコールを捕まえ、crash コマンドでカーネルのコールスタックを確認する、という内容。ちょうど先日読み終えた『絵で見てわかるITインフラの仕組み』を思い出しました。セッション最後にこの書籍の宣伝をされていましたが、お昼休みのあの時間帯にあの場所に座っていたのは身内が多く、私も含めて半数くらいは持っていると手を上げていましたw 増刷決定おめでとうございます!!それにしても黒地に緑文字はいいですね。それと、スベってないですよ!楽しかったです(^^)

A34 Tanel Poder さんのセッション。E33 のセッションで魅せられて聴講しました。自己紹介がスゴイ。

Formar Oracle Database Performance geek, Present Exadata Perfomance geek ;-)
先の snapper.sql の Exadata 版 ExaSnapper(開発中)を用いたトラブルシュート手順の解説。"cell single block physical read" や "V$CELL_CONFIG" など、Exadata を触る機会のない私には見知らぬ言葉がたくさん出てきました。cellcli コマンドの出力に現れる "Cell Efficiency Ratio" とは何だ?ということでいろいろ調べられたところ
The "Bytes returned by Exadata" metric actually uses the "Cell physical IO interconnect bytes"
というようなことだそうです。これは Smart Scan が機能したときの状況なんでしょうね。その効果については ODDD 2011 の資料がわかりやすいです。後半は早回しであまりよく覚えていません。

A35 Francisco Alvarez さんのセッション。タイトルのとおり RMAN の基本的な概念とその使い方をワークショップ形式で解説。RMAN は実際に使っているのでオペレーションの再確認になりました。時間ベースの不完全リカバリを行うときなどは、NLS_DATE_FORMAT 環境変数で日時を表示しておくことが必須ですよね。資料とスクリプトは blog のプレゼンテーション一覧にある「Backup and Recovery for DBAs」から確認できます。

A36 Tanel Poder さんのセッション。実際に遭遇したケースを例にそのトラブルシュートの解説。環境は HP-UX(Itanium) の Oracle 11g(11.1.0.7)。普段は何ともないが、ある短い期間、CPU 使用率が急騰して DB に接続するユーザーの操作が全て止まってしまうという問題。AWR レポート→ASH→runki(HP-UXのトレースツール群)での調査。状況をひとつずつ確認していくと、アプリケーションサーバ起動時に大量の新規接続が張られる "Logon Storm" 問題と言うことに。バグとしてあがっているようです。

Bug 9744092: EXCESSIVE AMOUNT OF AUD FILES BEING GENERATED IN 11.1
11g から標準監査における OS ログのファイルの命名規則が変わって末尾に連番の数字が付与されるようになり、その連番を取得するためにディレクトリエントリの走査が行われるけれども、それは排他ロックを伴うので他のプロセスが待たされるようです。対策としては Oracle Net Listener の RATE_LIMIT を設けるということでした。 「Database 重い?よし、まずは AWR だ!」から始まって OS のシステムコールを追いかける旅。様々なレイヤーでの知識が要求されますね。。。ここまで理路整然と解決できるようになりたいものです。

Day3 は終日 JPOUG のセッションを聞くつもりでしたが、Tanel さんのセッションに魅せられて、午後は普段聞けないであろう方々のお話を聞いてきました。でもハッシュタグを見ていると面白そうな話がちらほらと。。。

後日公開された資料のリンクをまとめておきます。

最後に、このような素晴らしい技術カンファレンスを開催して頂いたインサイトテクノロジー様をはじめ、スタッフや登壇者、JPOUG のみなさま、ありがとうございました。来年も是非参加させていただきたいと思います。

1 件のコメント:

  1. 有難うございます。どしどしご意見をください。

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